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【博士と就職】学位取得後の進路を考える

こんばんは。今日は博士号取得後の進路について考えてみようと思います。特にアカデミアに残らずに就職を考えている方に向けた記事になります。私自身は、材料科学分野で博士号を取得した後、現在は都内のIT企業でソフトウェア開発、あるいは調査業務に携わったりしています。学生時代は新物質合成を目指したバリバリの実験屋でしたが、この人工知能の時代にAIに触れないのは深刻な機会損失になると考え、IT畑に転身しました。自身の経験から得られた、博士就職のメリット・デメリットと博士の就職戦略についてお話します。最後に大学院での研究生活の(かなりぶっちゃけた)感想も書いています。

博士就職のメリットデメリット

メリット

  • 仕事を選べる

これは博士たちの大きなメリットです。専門性の高さゆえに「専門ばか」的な扱いをされる不安があるかもしれませんが、逆に博士採用を行う企業は「こういう仕事をして欲しい」という具体的なイメージを持って募集をかけることが多いです(メーカー企業への就活体験からこれは感じました)。仕事内容が決まれば勤務地を絞り込めることも多いと思います。学卒・修士卒ではどんな仕事を任せられるか、どこで働くか入社するまで分からないことも多い(=良いキャリア形成ができるかが運任せになってしまう)のですが、博士だと自身のキャリア形成をより具体的にデザインすることができます。

  • 専門性へのニーズの高まり

世の中、簡単に解決できる問題は限られています。技術や知識は猛烈な勢いで進化するので、専門性を持ち学び続けられる人材でなければ価値を生み出すことは難しくなっています。メーカーはもちろん、研究と直結する内容でなくとも博士の専門性を買う企業は多くあります。代表例がコンサル・シンクタンク業界です。科学技術系の専門性を生かして製造業向けのコンサルタントになるとか、数学知識を生かして金融向けコンサルタントになるというのは良くあるケースです。他には、官僚、弁理士などでも専門性は確実に必要となります。お薦めなのは、「博士の専門性×何か」というように、2つの専門分野の掛け算で自身の付加価値を高めることです。

デメリット

  • 就活に時間を割けない

博士2年の段階で研究成果が出ていないと卒業できるかも分かりません。そうなると当然研究に時間を割かなければいけないですし、そもそも就活をしていいのか?という葛藤があるかと思います。こればかりは、私から言えることはあまりありません。強いて言えば、修士・博士1年のころに頑張って早いうちに成果を出し、論文を書いて卒業への目途を立てておくこと、これに尽きます。成果が出るタイミングは選べないので無責任なことを言っているかもしれませんが、就活を円滑に進めるにはこれしかないと思います(まぁ、酷な話ですが・・・。研究のみに時間を費やしたい、という気持ちは非常に理解できますし、その方が人類社会への利益に適っていると思います、えぇ。)

また、企業によっては給料が学卒・修士卒と同じランクから始まるというところがあります。私は専門性には相応の給与が支払われるべきと考えたので、博士枠の給与体系がある企業を選びました。また、日本企業の場合「粘土型人材」を欲することが多く、入社後に自社のカラーで染めて育てるということが多いと思います。そのため博士よりも若い学卒・修士卒の学生を取りたがるという企業は確かに存在します。

博士の就活戦略

博士はどのような戦略で就職活動を行うべきでしょうか。

  • 異分野就業を考えよう

長い人生を考えると、大学院の学生時代はわずかな時間です。20代後半の輝かしい時代に何をするかは極めて重要ですが、その後の人生で学ぶことの方が総量としては多いでしょう。そのため、大学院での自分の専門分野に拘り過ぎてはいけない、ということを覚えておいて下さい。大学院で材料の研究をやっていても、例えば電通・三井物産・三菱総研・三井住友銀行などの異分野企業への就業も可能なわけです(就業したいかはまず置いておいておきましょう)。そういった可能性を閉ざすべきではありません。

異分野就業へのモチベーションを得ることが重要なので、早いうちから企業研究やインターンへの参加を検討するのが良いかもしれません。

  • アカリク等の就活支援サービスを積極的に利用しよう

友人の例ですが、アカリクを利用して材料系からIT企業への就職を決めた博士がいます。IT系企業やコンサルなど、幅広い業種を斡旋してもらえるようです。また3月、4月には卒業の目途が立っておらず就活が遅れる人もいると思います。アカリクの場合9月などの就活シーズン後期にも企業を斡旋してくれるため、就活が遅れてしまった場合にも力強い味方になってくれると思います。

自分のことを少し

私自身は、ITやAIに興味があって就職したのに加え、アカデミアが嫌になってしまい就職した節があります。ぶっちゃけて言いましょう。論文を書きたいくないと思っていました。その時間を、世界を変えるような材料を見つけるための実験に費やしたいと思っていました。結局そのような材料は見つけられなかったので、自分の博士の時の研究にはほとんど価値がない、とも思っています。なので学生時代はかなり悶々とした日々を過ごしていましたが、企業での生活は一転して非常に充実しています。人の役に立つ仕事をしている、という強い実感がありますし、目論見通りITやAIの技術も身につけられました。私のように、大学より民間企業の方が向いている、というケースは珍しくないはずです。幸せな人生のために、博士号取得後の民間企業就職を前向きに考えてみてください。