こんばんは。今日も機械学習を使った実験です。一般に機械学習は内挿は得意ですが外挿は苦手だと言います。というわけで、sin関数の一部を学習させ、外挿するとどうなるのかを実験して確かめることにしました。予測誤差を出力できるガウス過程回帰に加えて、機械学習3兄弟である(と勝手に思っている)ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、ランダムフォレストを用いて検証しました。問題設定としては、[0, 2pi] の範囲で学習を行い、それより3倍長い[0, 6pi]の範囲での予測を行いました。
〈お断り〉
scikitlearnとkerasモジュールを使いましたが、モデルのハイパーパラメータは学習データに出来るだけ適合するように選んでいます。一般にそんなパラメータは使わないよ、と思われることがあるかもしれませんが、どうかご容赦下さい。
〈目次〉
目次はこちら。最後に本稿のまとめを書きました。要するに、外挿するときは注意せよ、ということです。
ガウス過程回帰
まずはガウス過程回帰(GRP)からです。標準偏差を評価してくれるので大好きな手法です。GRPでは「カーネル」によってデータ同士の共分散を表現する必要がありますが、ここではRBF(Radial-basis function)カーネルを用いました(詳細はこちらの資料などをご参照下さい)。
学習データ(赤点)は見事に再現できていますね!そして問題となる外挿領域(青線)ですが、2つ目の山を越えたあたりから全く予測できていません。また学習点がないことから信頼区間も大幅に広い範囲になっています。[0, 2pi]の範囲で学習できたからと言って永遠に波打つわけではないのですね。これは面白い。しかしながら、本来カーネルは解析対象となるデータの特徴に応じて適切に設計する必要があります。RBFは滑らかな関数のモデリングには向いていますが、sin関数のような周期的な関数に対しては、以下のExp-Sine-Squaredカーネルを使うべきでしょう。- Exp-Sine-Squaredカーネル:
lは長さスケールを調整するためのハイパーパラメータで、pは周期性を調整するためのハイパーパラメータです。これらは最尤推定によって自動的に計算されますが、初期値や取りうる値の上限・下限を設定することができます。
このカーネルを用いてモデリングをすると以下のようになります。2piという周期性を上手く再現できていることが分かりますね。sin関数を使ってるので答えありきですし予測対象が単純すぎるきらいはありますが、適切なカーネルを選ぶことで結果はこれだけ変わるのだということがはっきり示されたのではないでしょうか。一番人気はRBFカーネルですが、色々なカーネルを知っておくのはGRPを使う上では必須だと言えると思います。こちら、コードの一部です。周期性パラメータpの初期値は3.5としたのですが、自動的にp = 6.28(つまり2pi)に調整されたことが分かります。なお、初期値の取り方によって結果が大きく変わることには注意が必要です。結果が時々収束しません。
from sklearn.gaussian_process import GaussianProcessRegressor from sklearn.gaussian_process.kernels import ConstantKernel, RBF, WhiteKernel, ExpSineSquared from sklearn.preprocessing import StandardScaler # GPモデルの構築 kernel = 1.0 * ExpSineSquared(1.0, 3.5, length_scale_bounds=(1e-05, 1.0e2), periodicity_bounds=(1e-1, 1.0e2)) + WhiteKernel() gpr = GaussianProcessRegressor(kernel=kernel, alpha=0) gpr.fit(X, scaler_y.transform(y)) print(gpr.kernel_) #65.9**2 * ExpSineSquared(length_scale=100, periodicity=6.28) + WhiteKernel(noise_level=1e-05)
ニューラルネットワーク
お馴染み、ニューラルネットワークの結果がこちらです。2piまではほぼ完全に学習できていますが、即座にsin関数から離れていってしましました。GPでは2つ目の山までは予測できていたのですが・・・この場合も、外挿してはいけないことが良く分かる例となりました。
サポートベクター回帰
続いてサポートベクター回帰です。scikitlearnのデフォルトパラメータのうち、イプシロンチューブの幅を0.01に小さくし過学習するようにしました。どのような結果になるか大体わかるようになってきましたね。学習自体はうまく行えているようですが、そこから少しでもずれると、アウトです。
ランダムフォレスト
機械学習3兄弟の3男(?)、ランダムフォレストです。木の深さには制限を設けていません。決定木に基づいた結果らしく、学習データにはカクカク合わせにいっていて面白いですね。いかにもランダムフォレストな特徴だと思います。そして学習データから外れた途端、1直線に伸びていきます、永遠に(?)。この場合もやはり、外挿領域を予測するのは不可能なようです。
まとめ
ここで用いたモデルはすべて、学習データに対して非常にうまく内挿できることが既知の事実としてありますが、特にGRPに関してはデータの特徴に応じたカーネルを設計することで外挿にもある程度適用できることが示唆されました。一方で、RBFカーネルを用いた場合のGRPや、NN、RF、SVFの例から明らかなように外挿する場合には十分な注意を払うべし、ということもまたはっきりと分かりました。今回は1入力1出力モデルでしたが、より複数の入力チャネルを持つ場合にも同様のことが言えるはずです。このことから、予測を行う場合には
- 学習データに含まれる数値の下限と上限を知っておくこと
- 上限、下限を逸脱したデータを用いて予測する場合には大きな予測誤差を伴うこと
- 学習データの特徴を、ヒストグラムによる可視化などを用いて可能な範囲で把握しておくこと
の3点は少なくとも覚えておいた方が良いでしょう。そういう意味で、カーネルを自在に設計でき、予測値の信頼性を評価できるガウス過程回帰は非常に強力なソリューションと言えるのではないでしょうか。